性的同意って何?刑事司法を考えるジェンダー学習会

こんにちは!篠原くるみです。
1/31(日)に、北区議会議員のうすい愛子さん(立憲民主党)・せいの恵子さん(日本共産党)とジェンダーイコールの共催で「性的同意って何?刑事司法を考えるジェンダー学習会」を開催しました。
講師は千葉大学大学院教授(刑事法)の後藤弘子先生。
オンラインでの開催になりましたが、約20名の方に参加していただきました。

問題点

  • 性交同意年齢が低すぎる
    日本における性交同意年齢は13歳で、他の先進国と比較して低年齢。そもそも、その前に必要なはずの性教育が十分に行き渡っていない。
  • 性被害/性加害のジェンダー不均衡
    例えば男女間の性暴力で女性が被害者だった場合、女性は被害を受けたにもかかわらず責められることがある。男性の場合は”武勇伝”になることも… 発生する行為に対して、ジェンダー規範の不均衡がある。
    また一方で、生物学的な性差間においても不均衡がある。日本では Abortion pill は認められていないため、これを使って堕胎した女性は自己堕胎罪で犯罪者になる。もし手続きの上で中絶をしたとしても、性被害を受けた上に堕胎という罪悪感を何重にも植え付けられることになってしまう。
  • 性犯罪に対する構成要件のハードルの高さ
    日本では、「暴行」「抗拒不能」などの要件を証明しない限り、加害者は罪に問われない。

同意のない性行為は性暴力。では、同意とは?

内閣府の #性暴力をなくそう #パープルリボン の啓発動画です。
http://wwwc.cao.go.jp/lib_008/no_violence_act/about_r02_01.html

一方で、こちらは後藤先生が出演されたAbemaTVのコンテンツ。
https://times.abema.tv/news-article/8632968

日本学術会議が提言した「同意がない性行為は犯罪とすべき」について議論しているのですが..
後藤先生と他の出演者の方々(性差別をしているわけではないが、特にジェンダーに問題意識を持っていないと思われる人たち)との間で、「同意」の線引きに大きな認識差があるようです。

では、この認識差がなぜ生まれるのか?先生は次のように考えたそうです。

  1. その場を支配する権力
    「嫌だったらノーと言えるでしょ」「思わせぶりなことをしたんじゃないの」「自分だったら逃げられる」
    これは、その場を支配する権力を持っている人の考え方だと捉えることができます。
    子供と大人、配偶者間、上司と部下、学校や指導の場。多くの場合、人間関係には何かしらの上下関係があります。
    これにはジェンダーギャップも関係していて、女性は社会的・経済的地位の低い立場になりやすい。さらに、「男を立てる」「女性は従順であるべき」のようなジェンダーバイアスを、男性も女性も内面化していることが多々あります。(一方で、女性の権力者ほど自分の権力に鈍感になりやすいという話もありました。)
    性犯罪で無罪になるケースはほとんどが不思議。しかし、裁判官=権力を持っている人たちにとっては、ノーと言えない・抵抗できない心理状態が想像できません。その結果、無罪判決が下されていると先生はおっしゃっていました。
  2. 相手を尊重するコミュニケーション=意思確認の大切さ
    日本語は「ハイコンテクスト」な文化だから、性行為に対して明確に意思確認を取るようなことは難しいのでは?という意見がありました。「空気読む」「雰囲気壊さない」「行間読む」みたいな感じですね。
    この「日本の文化」で片付けられてしまうのって、ジェンダーの議論においては典型的なんですよね.. 各国の文化はそれぞれですが、人権は共通のはずです。
    言語のコミュニケーションでも全然意図と異なる捉え方をされてしまうことだってあるのに、非言語のコミュニケーションは尚更伝わりにくいということは容易に想像がつきます。相手は自分ではないのだから、1つ1つ丁寧に確認をしていくことが大切です。

この「同意」が、性犯罪に対する構成要件と関わってきます。
日本では、「暴行または脅迫があった」もしくは「(意識がないなど)抵抗できない状況にあった」ということが認められなければ、性暴力は犯罪になりません。また、訴えを起こすには「いつ・どうやって」を明確に証言しなければなりません。

日本学術会議では、国際人権基準を反映し、「同意の有無」を中核とした刑法改正をするべきと提言しています。

  • No means No 型:「No」の意思表示があれば犯罪に。国連、イスタンブール条約→イギリス・ドイツ・カナダ等。
  • Yes means Yes 型:「Yes」のみが同意。スウェーデン。行為を始める人に確認の義務を負わせ、確認を怠れば処罰される。これが最も「同意のない性行為は性暴力=犯罪」としやすい。

「男性化」された刑事司法

そもそも、現在の日本における刑事司法自体が「女性の生」が反映されていないということでした。

どういうことかというと、刑事司法の目的は「侵害された秩序の回復」のはずだけれども、これは1907年(!)時点での秩序がベースになっています。当時は、ジェンダーギャップ以前に女性は男性と同じ社会的権利を持っていなかった。つまり、ここで想定されている「社会における秩序」=「男性にとってあるべき秩序」なのです。
刑事司法は、被害にあった人を救済することが目的であると思いがちですが、権力者の既得権益を守ることに有利に働くように作られている側面があることを知っておくべきだと思いました。

現代においても犯罪者の多くは男性で、司法に関わる人も多くは男性です。
「少年院」とかもその名残ですよね。犯罪を犯した女の子の場合は「女子少年」と言われるそうですよ.. 

罰則強化のトレードオフ

さて、過去に作られた決まりがベースになっているというのはどの国でも同じですが、法改正はそれぞれの国で行われています。
日本では、2017年の刑法性犯罪改正でやっと世界各国の1970-80年代に追いついたとのことでした..

性犯罪の懲役刑は5年以上20年以下になりましたが、基本的なところは1907年から変わっていないそう。
では、抑止力が働くくらいに厳罰化すればいいのでは?と思ってしまいますが、重くすればいいというものではないのだそうです。なぜかというと、厳罰化するほど有罪になるハードルが上がってしまう。
ちなみに、日本での最高刑は死刑ですが、スウェーデンにおける最高刑は懲役21年。絶対的な重さではなく、「法的安定性」といって、他の犯罪も含めた全体のバランスを考えないといけないということでした。

性教育って何をしたらいいの?

「紅茶と同意 Consent – it’s simple as tea」めちゃくちゃわかりやすい..!

子供たちを性犯罪の被害者にも加害者にもさせないことが大切で、それはわたしたち大人の責務です。
では、性教育といえばみなさんどんなことを思い浮かべるでしょうか??

今回後藤先生は、性教育といえばおしべとめしべの話から入りがちだけれども、実は初めから論理を伝える必要はそんなに無くて、まずは自分の意思を相手に認めてもらう・自分の言うことが尊重されるということが性教育の基礎だとおっしゃっていて、なるほどなぁと納得しました。
例えば、今日の挨拶を「言葉だけ」「握手したい」「ハグしたい」.. などと選択肢をあげて、大人はその通りに対応する。自分自身の意思表示にはちゃんと効力があることを、他者が認めることによって理解してもらうということですね。
それと、紅茶の動画にもありますが、「気が変わった」「昨日は/先週は/一年前はOKだったけど、いまはダメ」も尊重されるべきで、これも子供達にぜひ理解してほしいなと思いました。

最後に

わたしは中学の途中まで満員電車に乗って通学していた時期があり、何度か痴漢に遭遇したことがありました。
でも、親や先生には言わなかったし、友達と「今日チカンいて」「まじ?キモいね」くらいで終わらせていました。自分も周りの子もその状況があまりに日常化してしまっていて、被害を被害と認識していなかったんですね..
だけど、わたし達が問題を矮小化してきた結果、いつまでも痴漢はいるし、子供達が被害に遭うわけです。
我が子には「痴漢に遭ったら絶対に言って。そいつのこと社会的に終わらすから」と伝えていますが、言ってくれるかな..
もちろん被害に遭わないことが一番ですが、何かあった時に自分にも落ち度があったかもなんて絶対に思ってほしくない。いつでも味方になる人がいるよと伝えていきたいです。

刑事司法難しそう、、ついていけるかな、と思っていましたが、後藤先生がわかりやすく説明してくださり、現在の刑事司法の問題点を知り、自分にできることを考えることができました。
誰もが被害者にも加害者にもならないことが一番です。だけど、当事者にならない限りは他人事としていてはダメで、今ある問題にきちんと目を向けていきたいと思いました。

2/11、3/7 Twitterデモ #同意のない性交を性犯罪に​

「【緊急署名】不同意性交等罪をつくってください!」署名https://www.change.org/p/%E7%B7%8A%E6%80%A5%E7%BD%B2%E5%90%8D-%E4%B8%8D%E5%90%8C%E6%84%8F%E6%80%A7%E4%BA%A4%E7%AD%89%E7%BD%AA%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84

映画「性別が、ない! インターセックス漫画家のクィアな日々」

篠原くるみ
こんにちは!ジェンダーイコール 篠原です。
ドキュメンタリー映画 「性別が、ない! インターセックス漫画家のクィアな日々」 。
こちらの映画、公開に向けてクラウドファンディングで資金調達をされていました(すでに募集は終了しています / プロジェクトページはコチラ)。
ジェンダーイコールと同じ東京都北区で活動されている Rainbow Tokyo 北区 代表の時枝氏に教えていただき、わずかながら支援させていただきました。そして、4月30日 UPLINK渋谷にてクラウドファンディング支援のリターンとして先行公開の鑑賞をしてまいりました!

セクシュアリティを「表現する」ということ

映画のテーマとマッチしてるかわかりませんが。一言、すごく「爽快」な映画でした。

自らのセクシュアリティを語る登場人物の方々。
「ヒゲがあっておっぱいがある自分の姿がすごくしっくりきた」って語る姿、めちゃくちゃカッコよいのです!

僭越ながら、わたしも「母親役割」「性別役割」から抜け出せていなかったときがすごくしんどかったなぁと思い出してしまいました。。
悩みの種類はぜんぜん違うと思います。ただ、「本当の自分」がわからないとき、周囲に理解してもらえないとき、自分に胸を張れないときが辛いという点では、いわゆるセクシュアルマイノリティと言われる人もそうでない人も、みんなおんなじだろうと思うのです。

そして、主人公であるマンガ家の新井さん。コミックエッセイでご自身や周囲の方々についてリアルな表現をしている方です。
性に悩む人たちからたくさんの支持を得ている一方で、セクシュアルマイノリティの実情を公にすることに対し反発を示す人もいるとのこと。
そんな声に対しての新井さんの一言に、わたしはとても勇気付けられました。
声を上げることで見える世界がある。本当にその通りだと思います。

子供(小2)の反応

今回、子供と一緒に鑑賞させていただきました。
親的な目線としては、視野を広げてほしいとか、そういう想いもあり。そして単純にどんな反応するんだろう?という興味もあり(笑)
とはいえ、結構きわどい表現とか出てきそうだし、大丈夫かな〜?と内心少しドキドキしていましたが、本当に子供にも見せてよかったと思っています。

子供なので感想は単純ですが、
「〇〇さんは、お仕事で一緒の人。学校の先生。」
「〇〇くんは、小学校のとき男の子が好きだと思ったんだよ。」
「あの人は、まえは男の人だった。」
「あの二人は、家族とかきょうだいじゃないけど、一緒に住んでる。」
などなど、ちゃんと見たままの事実をなぞっている!しっかり見ていたようでエラかったです。

その一方で、映画の終盤、
「ママは、性別あるよね???」と心配そうに確認してきました。。
そっか、そこかぁ。なんだか少し不安になったみたいでした。

子供の反応は正直です。彼女のこれまでの8年間、家族も友達も先生も、「女」と「男」しか見えてこなかったのだから。

それでも、大事だと思うのは、事実を見せること。
世の中にはこんな人がいて、こんな顔をしていて、こんなふうにしゃべって、こんなお仕事をしていて、こういうふうに生きている人。
画面の向こうだとしても、ドラマとドキュメンタリーの違い、創作とリアルの違いくらいは子供にもわかります。
実在する人間が動く姿を見せること、見せ続けることが大事だと思うのです。

これからの社会に絶対必要だと感じたこと

わたしがこの映画を見て、即刻いまの社会に取り入れるべきだと強く感じたことが二点あります。

ひとつめは、性別欄の廃止もしくは改定です。
「男・女」ってマルつけるあれ、いる?
ほとんどのケースで必要ないですよね。そもそも大抵「男」が先に書かれてることに毎回イラッとするし、なくてよくないですか?
…とわたしですら思うくらいなので、どちらにもマルを付けたくない、しっくりこない方はきっともっと毎回嫌な思いをされていると思います。

それからふたつめ。
学校の先生や保育士さんに、セクシュアルマイノリティといわれる方々が増えるといいなと思いました!
出張授業とかでもいいです。もっともっと子供たちの身近な存在になってほしいなと思います。

この映画に出てくるような、単なる「男」とか「女」に分類されない人たちを「なんだかよく分からない人」としてしまう原因。
その大半は、多くの人がセクシュアルマイノリティ当事者との接触機会を逃してきたことだと、子供の反応を見て感じました。

自分ではない人間と関わり合うとき、「人と人」としてリスペクトしあえる付き合いができれば、相手の「性」が何かというのは取るに足らないことなんじゃないでしょうか。
映画「性別が、ない! インターセックス漫画家のクィアな日々」。ドキュメンタリー映像のパワーを感じました。
魂を込めてこの映画を製作された渡辺監督の想いが、是非たくさんの人に伝わってほしいなと思います。

映画の公式サイトはコチラ。2018年7月28日よりUPLINK渋谷にて公開されます!

秘密の質問

くるみ
こんにちは!ジェンダーイコールの篠原くるみです!
家では色々とできないので、特に最近はほぼ毎日と言っていいほどカフェに行きます。
今朝、某カフェで新しいポイントサービスが始まったと案内され、会員登録をやってました。
そこで出てきた「パスワードを忘れた時の秘密の質問」。

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小1の壁について思うこと

くるみ
こんにちは!ジェンダーイコールの篠原くるみです!
私事ですが、今年度子供が小学生になりました。メディアによって囁かれていた小1の壁、、わたしもとっても怯えていました。
怯えていました。いましたが、、
うちには小1の壁はありませんでした!
わぁ〜い!
というわけで、みなさんの参考になるかはわかりませんが、せっかくなので理由を考察してみようと思います。

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職業と所得のジェンダーギャップ

くるみ
こんにちは!ジェンダーイコールの篠原くるみです。
今回は、職業とそれにより得られる所得のジェンダーギャップについて最近気になった記事や本をご紹介します。男性と女性の賃金格差はどこから来るのか?どうしたら解消できるのか?女の子が大人になる過程で取る、「選択」に注目して考えてみます。

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諸外国における女性の社会進出–どうなる日本?

くるみ
こんにちは!ジェンダーイコールの篠原くるみです。
前回、田渕さんが、ジェンダーギャップの小さいイメージの強い北欧における高福祉的社会構造と宗教の関係性について歴史的観点から執筆してくれました。今回は、わたくし篠原が数々のジェンダー関連本を読みあさるなか、欧米諸国ではなぜ日本に比べて女性の社会進出が進んでいるか、もっとも腑落ちした仮説をご紹介します。

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